八重山を読もう! PART2 池上永一の巻


*1 池上永一
 作家の略歴はJTAが提供するサイト・美ら島物語を参照してみてください。

















*2 風車祭(カジマヤー)(*1)
 97年の往年を祝う八重山独特のお祭り
 97歳を迎えると風車で飾り立てた車(現代では)でパレードをし、界隈のみなでお祝いをするという。


*3 わが島のはなし バガージマヌパナス 文春文庫 ファンタジーノベル大賞を受賞しています。
 

*4 あたしのマブイみませんでしたか
 角川文庫

*5 風車祭(カジマヤー) 文春文庫 直木賞候補作となりました。
 大まかな構成については直木賞の非公式サイトでどうぞ















































 ところでこの作品は、このサイトによく遊びにきてくれるえてぽんさんの紹介出会うことができました。
 素敵な作品を紹介してくれてありがとう!!

■これは現か戯れか?
 「八重山の雰囲気を味わえる小説ってあるの?」と問われたならば、僕は間髪をおかず「池上永一(*1)を読んでみては!」と答えるだろう。

 「長生きに執念を燃やし疫病だの様々な死の機会を乗り越え97歳を迎えるお婆」、「魂をどっかに落として幽霊を見ることがきるようになった若者達」、「その本人とは関係なく分身としていたずらを重ねる若者達の魂(マブイ)」、「洗濯好きの6本足の妖怪豚」、「226年間も天国(グソー)にいけず魂(マブイ)のままこの世を彷徨う美しい娘ピシャーマ」。。。

 これらが一同に活躍するならば、それはホラーか、はたまたSFか、あるいは幻想小説か、と思うのが道理ではないか。

 しかし、石垣島で育った作家・池上永一の代表作「風車祭(カジマヤー)(*2)」は、こんな訳のわからない面々が大活躍しながらも、「さもありなん」と、あたかも現実の事件のように思わせる、とってもリアルで素敵な物語なのだ。

■「風車祭(カジマヤー)」の圧倒する力
 彼は郷土・石垣島を題材にした作品として、「わが島のはなし バガージマヌパナス(*3)」、短編集「あたしのマブイみませんでしたか(*4)」、そして、この「風車祭(カジマヤー)(*5)」を発表している。

 いずれも、南国の雰囲気や、生命力に溢れるお婆、魂や霊魂あるいは天国といった眼にみえない世界との交流、酒・唄・踊りといった島の風土を盛り込んだ興味深く楽しい作品であるのであるが、僕としてはこの「風車祭(カジマヤー)」がピカイチのお気に入りだ。

 池上はけして文章が上手な作家ではないと思う。
 そのため、どうも言葉使いがひっかかって物語り世界に入り込めないところがある。

 しかし、この「風車祭(カジマヤー)」は、圧倒的な力でもって、僕を物語世界に引っ張り込み、そこから逃れるのを許さなかった。僕もうっかり魂(マブイ)を落とすんじゃないかと心配になり、魂(マブイ)がこぼれ落ちないように思わず胸を押さえてしまったほどだ。

 この力は、やはり石垣島の風土のそのものが、違和感なく作品に練りこまれたことにより得られたのだと思う。
 あちこちに御嶽があり、ユタやツカサが活躍する島。
 伝統的な行事が数多くある島。
 昔話や民謡・踊りが今でもごくあたりまえの島。
 お婆が元気な島。
 お酒が大好きでいろんなものごとに大雑把でいいかげんな島。
 混沌、命、俗、陽射し、陰、神々、海、祭、歌、魂。。。
 こんな事象や言葉で代表されれる多面的で生き生きとした島の姿が、力強いプロットとして、また、流れるようなシナリオとして、重層的に盛り込まれている。

■舞台装置となった現実
 物語は、島の各月のお祭りにより章立てされ、進行する。
 実際にある街、川、橋、御嶽が舞台となり、要所要所で挿入される八重山民謡は、通奏低音となって物語を八重山色に染める。
 これらの地理や風習が装置となって、物語を現の世界に引っ張り出すことに成功している。

 この物語は、一気に読むのも楽しいけれど、ちょっと時間がある方は、住宅地図帳を広げて、飲み屋のある通りや橋の場所や個々の御嶽を確認しながら読むことを是非お勧めしたい。
 きっと、南国の濃密な空気と生き生きとした主人公達が眼前に現れ、動き出すこと請け合いである。そして、読後にあらためて街の探訪や御嶽めぐりするならば、改めて物語の力を感じることができるに違いない。


 


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